例会に先立ち参加者には、4枚の資料と称するペーパーが手渡されました。それらの初めの1枚が、本題である「認知症を考える。“早期発見で先手を打つ”」の魁であり、残り3枚を殿とし不倶戴天の敵に眦を決し立ち向かうことになりました。まず高橋会長の雄叫びとして発せられたのが「頭脳健康度テスト」で、8問からなるミニメンタルステート検査(MMSE)の開始でした。MMSEは、1975年アメリカで認知症の診断用に開発された質問セットを元にして、各国で創意工夫したものが使用されています。検査するのは、被験者の記憶力、計算力そして言語能力等です。一般的なMMSEに興味のある方は、添付のPDFファイルをダウンロードしてください。続いて自己診断の質問13項目に応戦して本題へと進みました。

認知症、早期発見で生活を豊かに 本題の講演は、DVDに収められたNHKの番組「生活ほっとモーニング」で放映された「認知症 早期発見で先手を打つ」。映像は、会場中央に用意されたパソコンを介して白壁のスクリーンに投影されました。話の口火として、最新鋭の画像診断機器が紹介され、彩色された画像で示される診断結果には、脳のどの部位にどのような異常があるか疑問を挟む余地はありません。ひょっとしたらと思うような兆候に対し、それが加齢による社会生活に支障を来たさない自然な「物忘れ」なのか、脳の機能障害に因を持つ認知症であるかの診断が間違いなくできるのです。そう、認知症はもはや手を拱いているだけの難病ではなく、早期発見が治療効果を大きく左右する疾病になったのです。

展開する物語の大筋は、妻が初期のアルツハイマー症(AD)と診断された夫婦の2年間の経緯を追い、そこに適宜長寿医療の専門家とゲストの談話を挿んで展開します。しかし、最初に受診した医者から受けた病名は鬱病で、一向に改善しない妻の症状に夫が誤診ではと、専門医に駆け込むという辛い曲折もありました。夫婦の経験を他山の石として、次のようなADの代表的初期兆候に気づいたら、神経内科あるいは物忘れ外来等の専門医を訪ねてみましょう。

(1)物忘れ;食事で食べた物ばかりか、食事をしたこと自体を思い出せない
(2)お金の支払いを間違える
(3)漢字がわからなくなる
(4)幻覚
(5)意欲の低下、気分の落ち込み

例えADと診断されても、それが早期発見であれば、罹患した人も心豊かな生活を送ることができます。その為の三か条は、以下の通り。

(1)薬剤による治療
(2)脳を活性化させるためのリハビリ:運動や音楽療法 
等も含め
(3)家族や介護者の良きケア認知症の原因と予防 

認知症に挑むためには、その原因を知り、開発の進むワクチン等を含め予防対策への理解を深めることが不可欠です。認知症を引き起こす可能性のある疾患は、頭を強打した後遺症を含め圧倒される数にのぼります。しかし、今年1月現在170万人に及ぶという認知症患者の半数以上の素因となっているのがADであり、それに続くのが脳の血管がつまることにより生じる脳血管障害で、両者併せると認知症原因の何と90%に達するとか。ということは、ADと脳血管障害を予防できるようになれば認知症は、それほど身構えて応対すべき疾患ではなくなります。

最大の難敵ADを見てみると、二つの蛋白質の脳細胞周辺及び内部での異常蓄積と、これが引き起こす記憶障害及び脳の萎縮が原因だと考えられています。前者は、AD患者の脳に「老人班」として顕著に見られる病変で、その中心となっているのがベータアミロイド(βA)です。標的が突き止められ、βAの蓄積過程の解明と除去方法の発見が試みられています。しかし、幾つかの遺伝子の関与も明らかにされ、現在のところADの頼れる治療法はありません。そこで現状における最高の認知症予防法とは、そう遠くない将来福音がもたらされることを信じ、健康で脳を活性化させる規則正しい生活を送り、MMSE等により脳の健康度を知っておくということです。

番組が終わり暫時の休憩の後、殿の3枚のペーバーが取り上げられ認知症の現況と原因並びに予防法をお浚いし、予防法の実践を兼ね『ぼけたらあかん 長生きしなはれ』という長寿の頌歌を2度唱和して終了。